ふと友達との会話がとぎれた時。
目に入ったのは、窓際の席で教科書を覗き込みながら話しあっている二人。
一方はどこか楽しそうにしていて、一方は淡々とそれに返しているだけのようだ。
そう見えるだけで、実は淡々としている方もそれなりに楽しんでいるのだと分かるくらいには、親しくなった。


 喜怒哀楽がないのではなく、表面に出にくいのだと気付いたのは少し話すようになってから。


実は結構激しい性格してるんだよなあ、なんて思いながらそのままぼんやりと見ていると、何を思いついたのだろう、先ほどから楽しそうに笑んでいた方が更に笑みを深くして、相手の耳に口をよせる。

あ、俺がやろうとした時には訝しそうに眉しかめたくせに。

自然と頭を傾けたところをみて、腹を立てるでもなくついこの間のことを思い出す。
その差は何なんだ、ひどい奴だなお前と机に立てた肘、そこから伸びる腕を過ぎて手のひらに頬を預けながらぽつりと呟くと、さっきまで話していた友人が拾ったらしい、「何?」と聞き返されてしまった。
「や、何でもねーわ」
別段興味もひかれなかったのだろう、すぐに他の友人との会話に混ざった彼に内心で感謝して、目は二人を捉えたまま。



 ………あ。



こそこそと内緒話でもするかのようにしていた二人が、同時に笑い出した。
くつくつと小さな、しかし軽いものではないのか耐えるように身体を縮こませて笑う。
先ほど耳を貸した方が何事かを呟くと更に笑いは大きくなって。
 ―――見ている方はなんだか、呆れるしかなくて。
緩い苦笑が浮かんだ。


同じような年頃が集まっているのだ、似た光景などたくさんあるのに、どうしてこんなにも微笑ましい、というよりは、気恥ずかしくなるのだろう。
とりあえず二人の笑いがおさまったら割り込んでやろうと決めて、クレイは音は出さずに口の動きのみで今一番の気持ちを綴った。

「お前ら、一生やってろ」
















こんな、世界。








026:The World
























2008 3 2
赤月帝国士官学校時代、クレイ視点のグレアレ。
クレイはとことん二人に巻き込まれてるといいと思います。

ご精読ありがとうございました。