■ 「いい天気だなー…なあ、いい天気の日に草原に転がるのって気持ちいいだろ?」 「…」 「……グレン?」 「…」 「なんだ、寝たのか」 「…」 「………グレン」 「…お前と一緒に今をむかえられて、よかった」 辛い時も悲しい時もあったけど。 今、この穏やかな時を共有できて。 神様、もしあなたがいるのなら感謝します。 この男に出会わせてくれて、ありがとう。 2003.12/3 書いた記憶がない。 ■ 真っ白い空間で、アレンは目の前にいる人物を見てポツリと呟いた。 「……どちら様…?」 「…あー…えと…本当、そういう感じですよね」 あはは、と誤魔化すように笑う少年は、変わった服を着ている。どこか遠い国の人だろうかと考え、でも言葉は伝わるんだなと安心した。 いくら自分が人見知りしない性格とはいえ、言葉が伝わらなければ人見知りも何も意味をなさないのだ。 というかその前に。 「…ここ、どこだ…?」 一面真っ白で、それ以外は何もない。人も自分達しかいないようで、とりあえずアレンはいくつもの戦場を共に生き抜いてきた愛剣に手をやった。 剣があれば、例え魔物が出てきても対処はできる。ふと手の甲を見下ろすと、ちゃんと紋章も宿っていた。 「本当にここ、どこなんだろう…」 ポツリと落とされた呟きに視線をやれば、少年は心底困ったような表情で辺りを見回していた。 アレンからしたら少し奇妙な格好の少年も、ここがどこだか分かっていないようだ。 「あ、えーと…」 自然目があって、どうしようもなくお互いニコ、と笑いあう。 とりあえず、今頼れるのは目の前にいる人物だけなのだ。 「俺はアレンっていいます。よろしく」 「あ、はい。ボクは武藤遊戯です。集英社発売のジャンプ出身です」 「しゅ…?ジャンプ…?」 耳慣れない単語に首を傾げながら、差し出された右手を握る。 悪い人物、というか子供ではなさそうだ。ざっとみて、十四〜五歳といったところだろうか。 その視線に気づいたのか、遊戯は大きな目でこちらを見上げてくる。 「どうかしましたか?」 「あ、いや…ちょっと格好が違うようだから、俺たち。だからちょっと見てただけなんだけど…」 気を悪くさせただろうか。 だが、遊戯はその通りだとただ笑った。 「ほんと、そうですよね。官服っていうのかな?ボクは学ランなんですけど、一度はそういうの着てみたいなあ」 遊戯の着てる服は、どうやら学ランというらしい。初めて聞く単語にアレンは新鮮さを覚えると同時に、帰ったらあいつに教えてやろうと思った。 普段は言い負かされてばかりなのだから、たまには自分が勝ってもバチは当たらないだろう。 年下のくせに生意気な、相棒…に………………。 「……………」 「?アレンさん?どうかしたんですか?」 今の今まで普通に会話していた相手がいきなり固まったら、多分過半数の人は不安にかられるだろう。自分も相手も分からない異空間では、更に。 遊戯も例に漏れることなく、不安にかられた。 そして顔色が真っ青になっている相手に、おそるおそるだが声をかけてみる。 「あ、の…アレンさん…?」 「あーーーーーーーーー!!!」 「!?」 いきなり大声をあげたアレンに、遊戯は驚いて肩をすくませた。 が、アレンはそれに気づく様子もなく、ただ忙しげに周りを見回している。 まるで誰かを探しているように。 「あの・・・アレンさん、どうかしたんですか?」 遠慮ぎみの問いかけに、アレンは再びニ・三回周りを見回しながら「どうしよう」と力なく呟いて。 「グレンシールが…いない……」 ポツリと、答えた。 「え?」 聞きなれない名詞に今度は遊戯が首を傾げる。 だがアレンにはそれに答える余裕がなく、また一言。 「グレンが…いない…」 ここに飛ばされる直前まで、確かに隣にいたのに。 いきなり目の前が真っ白になって、そして気づいたら見知らぬ少年がいて。 驚きと混乱のせいで、いつも空気のように隣にいた気配が消えたのにも気づかなかった。 「…グレン……」 アレンは真っ青な顔色のまま、相棒の名前を呼ぶ。 自分だけこの空間に来たのならいい。 だがもし、自分だけじゃなく彼もあの場所から飛ばされてたとして、そして今、グレンシールは自分の隣にいないこの現実。 魔物や敵の陣地なら、心配はしない。 学生時代からもう長く、グレンシールのことを一番知っているのは自分だから。 だが、ここは異空間。蓄えてきた今までの知識や経験で乗り越えられるとは限らないのだ。 「グレン…」 いつになく力ないアレンの呟きは、真っ白な空間に一瞬で溶けた。 2004. 5/21 遊戯王のエジプト編に熱くなっていた頃。 ■ 何でこんなとこで。 熱い息を吐きながらアレンは潤んだ目で海を見つめた。 青と緑の間のような色の海は透き通っていて、底にある海草や岩がぼんやりとした視界の中でもはっきりと分かる。 先程から必死で掴んでいるボートの上にはライフジャケットが放られていて、魚達にやるために用意されたエサも散らばってしまっていて本当に何をやっているんだろうと改めて思った。 「グレ、ン…っ、な、おい…」 「ん?」 背後から聞こえてくる声はあまりにも今のアレンの身体に効きすぎた。 ゾクゾクと背筋が喜んで、更に息が速くなって。 それでも、さすがにこれは駄目だし嫌なので必死に声を出す。 「頼む、から…っ島、あがってか、ら…ふ…」 「それで?ホテルに着くまでに何時間かかる?」 「で、も…っ!グレン…あ、やっ」 ボートにとりつけられている簡易階段にかけた足が震える。 すぐそこに海があるのに、アレンが今包まれているのはあたたかい水ではなくて冷たい腕。 借りた船を沖合いまで出して水着にも着替えて、今から潜ろうと海に入る直前にその腕はアレンを絡めた。 足の指先が海に浸かったこの状態は、いたく不安定だ。 海の上のボートというだけでそう言うには十分なのに、こんなボートのへりで何をしているのだろう。 「グレンシール…っ、ふ、ぁっ」 滑るグレンシールの指が。 「んぅっ…!」 身体は熱くなるばかりで。 ヌルと音がしたようで顔が赤くなる。 意識せずに首をふるふると振れば、後ろからくつくつと笑い声が聞こえた。 「グレっ…もういやだ……っ!」 「それはどっちだ?」 「どっちって…あ、ひゃ…っ」 憎らしくなるくらい頭のいい男だ。 唇をかんでアレンは快感に耐えた。 アレンが言ったのは意思のみで、主語は言っていない。 この男以外だったら、勝手にどちらかの主語だと思って受け取るだろうに。 そもそもこの男以外にこんなことを許すわけもないのだけれども、今はそんなことを考えている余裕があるわけでもなくて。 「どっちだ、アレン?」 「ふっ…ぁ、あ…」 くちゅりと濡れた音がして泣きそうだった。 「どっち?」 こんなところでするのが。 じわりじわりと焦らされるのが。 普通だったら言った本人ではなく言われた方がこれを判断するのに。 どっちにするかなんてことも気づかないのに。 グレンシールという男は、あくまでアレンを逃がさない。 「アレン」 く、と根元をおさえられて涙がこぼれた。 もうグレンシールの指はべたべたのはずで、どうしてほしいかなんて分かってるくせに。 「やだっ…グレ、もう」 「何が?」 「っ…ぁ、も…っ」 焦らされるのはいやだ。 早く。 早くしてほしいのに。 カリカリと、グレンシールの手首を爪で掻く。 「焦ら…な…っし、て……っ!」 途切れ途切れの言葉でもグレンシールは満足したのか、後ろで笑った気配がした。 2004.9/17 フィリピン旅行から帰った翌日に。 ■ ぺろ、とグレンシールの頬に流れた雫をアレンは舐めた。 思う存分海を満喫して機嫌は回復したのか、今は自分からグレンシールに構ってくる。 うわしょっぱい、なんて言いつつ楽しそうにしているアレンを見るのはグレンシールからしても嫌なことじゃなくて。 数時間前に自分がアレンを鳴かせた場所で、今度は自分がアレンに触れられていた。 「少し焼けたな、グレン」 「そうか?ま、どうでもいいしな」 「お前元々が色白いから顕著だよな。後で赤くなるんじゃないか?」 グレンシールの肩を指で伝い、二の腕、肘ときて最後は指先に。 塩辛いのは分かっているはずなのにまた舐めて、今度は手のひらに落ちていく。 「お前だって焼けただろ。まあ気にすることでもないが」 「ん、今はお前とこうしてる方が大事」 ちゅ、と手のひらから軽い音がする。 実際に来るまでは波の音はかなりするのだろうと思っていたけれど、ここの海は静かだ。 音もなければ揺れもほとんどない、優しく穏やかな海。 「グレン、お前しょっぱい」 「当たり前だろ」 たった今まで海の中にいたのだから、身体を濡らしているのは当然それで。 きれいな海だからこその味だ。 濁った海にはもう、人間の味しか。 「まだ舐めるのか?」 「うん、満足するまで」 手首を舐めて腕の内側をすべり、肩まで戻ってくると今度は首筋を。 喉が渇かないのかとグレンシールが思うほどアレンは律儀に舐めて、時々楽しそうに笑う。 「アレン?」 「何だ?」 「楽しいのか?」 「楽しいけど?」 「何でまた」 「お前の味だから」 まぶたにちゅ、と口づけられてグレンシールはアレンを見た。 「しょっぱいんだろ?」 「しょっぱいんだけどさ、グレンシールが混ざってる気がするから」 「うまいわけ?」 「海だけの味よりはずっと」 そう言われて、アレンの肌を伝う水滴を見やる。 確かに、この船を浮かべている海よりもアレンが混ざった雫の方が味がよさそうな気がした。 「な?そんな気がしてくるだろ?」 「…だな」 ひきよせた頬の水滴は、確かに味が違った。 2004.9/18 二日後。 ■ (日記より抜粋。前フリです) グレンやアレンが先生やってたら必死になって質問しに行くのに。 教科はグレンは理数系でアレンは文系だと思います。ということは高校でしょうか。 で、授業なんかでグレンが重心移動(物理?)の説明をしているとアレンが 右「授業中失礼します!グレンシール、お前俺んちの鍵持ったままだろ!返せ!」 左「・・・ああ、そういえばそうだった」 右「風邪ひどくなったから早退しようと思ったのに鞄探したらなくて慌てて戻ってきたんだぞ!早く出せ!!」 左「あ?治らなかったのか?昨日看病してやっただろ」 右「(赤面して)あれが看病かー!!早く出せー!!(教卓にいるグレンの方にずかずかと歩いていく)」 左「(そのままアレンの手をとってぐいとひっぱる)」 右「うわっ!?」 左「(教卓に押し付けてアレンの手を後ろ手に回してひねりあげる)」 右「いっ…いてててて!!!」 左「(生徒の方に向き直って)これが重心移動の実戦版だ。相手の勢いが強いほどやりやすいからな。弱い場合は少しくらい強い力で引っ張って押し倒せ。その方が後々もやりやすい」 うっすらと笑う教師に生徒一同一瞬沈黙。 そして次の瞬間に歓声。 女生徒(以下省略)A「も、萌えー!!!」 B「グレンシール先生鬼畜ー!!!」 C「アレン先生泣いてる顔可愛い…!!!」 D「ていうか昨日の看病って一体何したの…何したのグレンシール先生!?」 E「やばい、生!?生ホモ!?この二人ならいい…!!」 F「ぐ、グレアレ!?グレアレなの!?オタ友達にメールしないと…!!!」 とかなるんでしょうか。(さすがにありえない) あ、そうなると女子高か。じゃあ痴漢対策ってことで。 2004.10/20 ■ 時々、無性に誰かに触れたくなる。 季節とかそんなのは関係なくて、本当に時々、どうしようもなく人恋しくなって。 誰かに触れたくなるとは言っても、そこらの人に抱きつくわけにもいかないし彼女と呼べるような相手がいるわけでもない。 たった一言、それこそ一回でも彼女が欲しいと言えばいくらでも立候補する女性がいるのにも関わらず、アレンは決してそれを口にしようとはせずに。 ただコトリと、相棒の肩によりかかった。 「なーグレン」 「ん?」 彼の肩とアレンの頭が触れているからか、耳を伝うのはもちろん、体を伝って低い声が聞こえた。 服を通してぬくもりが感じられて、そのまま何を言うでもなくアレンは目を閉じる。 そのぬくもりはいつもと同じ温度。 いつの季節でも、必ず彼はアレンよりも冷たい。 「…お前冷たいなあ」 ぐりぐりと頭を動かせば、くすぐったいのかグレンシールは少し身じろぎをして、それでもアレンを邪険にするようなことはせずに淡々と手元の本を読み続ける。 その穏やかさが気持ちよくて、つい眠気が生じてきた。 ふわ、と小さなあくびを漏らすと涙が目の端ににじみ、指でぬぐってから再びグレンシールの肩に頭をぐりぐりと押し付けて。 ふと、グレンシールが笑った気配がした。 「何だよ」 「お前、動物みたいだぞ」 「マジで?何の動物だ?」 「さあ。でも小動物っぽい」 「小動物……ウサギとか?」 「…似合わねえ」 ぽつりと落とされた最後のそれに、「そりゃ俺男だし」と返せば「知ってる」と呟かれてくすりと笑いが漏れた。 学生の頃に知り合って、優に十年以上。 何故だか縁があったのか、共に同じ夢を追いかけて生きてきた。 正反対の性格ながらも気が合うのはおかしなものだと思うけれども、それでも今まで続いてきて。 自分達の過去を思い出すと、本当に笑いがこみ上げてきて仕方がない。 「お前が俺が男だって知ってるし、俺もお前が男だって知ってるのに何でなんだろうな」 今まで言い寄ってきた女性の数はいざ知れず、相棒がモテるのも知っているのに。 アレンもグレンシールも男で、決して女性のように柔らかくもないのに。 何で。 「あー…気持ちいい」 足を投げ出して、再度グレンシールによりかかる。 人恋しいとは言っても、そこらの誰かに抱きつくわけにもいかない。 ならば彼女をつくればいいのだけれど、残念なことにアレンにその気は起きなくて。 ―――つくろうと思えば多分、つくれるのだとは思う。 でも。 「アレン?」 「んー?」 「眠いのか?」 「あー、そうかも」 すり、と頬をよせるとこの男独特の低い体温が伝わってくる。 柔らかくも暖かくもないこれは、人恋しい自分にはまさにふさわしくないものだけれども。 それでも、確かにこの体温は自分に必要なものだ。 これ以上暖かくても冷たくても、きっと自分は満足しない。 自分の人恋しさは解消されない。 もし彼女をつくったとしても、人恋しくなったその時には、きっと自分は彼女ではなくこの男の元に来てしまうのだろう。 それが容易に想像できてしまうから、おかしくて仕方なくて。 更にこの体温が、愛しくなってしまう。 そして。 「…グレンー」 「何」 「………寝る」 「…ん」 その体温を持つ男がどうしようもなく好きなんだと、夢うつつの中で思った。 2004.11/16 最後の締め方が少しおかしいような。 ■ アレンは耳が弱い。 あっちがその気じゃない時でも息を吹きかけてやれば落ちたも同然、更に甘噛みすれば自分からもたれてくる。 「…グレン…」 俺の肩に頬を預けるアレンは既に顔が赤くて、その顕著な反応に気分がよくなって微かに笑む。 それから肩に顔を埋めたことによってちょうどいい位置にくるアレンの、耳。 そこにするりと舌を忍ばせて舐めれば、アレンはびくと肩を竦ませて。 「ひあっ!あ、や…っ」 輪郭を伝い耳たぶに歯をたてて、耳のつけ根に軽く口づけた。 たったそれだけでもう立ってられなくなるのか、しがみついてくる手に満足する。 「アレン」 「んっ…!」 腰にまわした手でしっかりと支えてやりながら、意識して少し低めの声で名前を呼ぶとそれだけで目の端に涙がにじんだ。 「…グ、レ…っ、おま、意地がわる…ぞっ!」 「今更だろ?」 「ぁ…っ」 ちろちろとほんの少し、舌先を動かすだけで満足に言葉もつむげなくなるアレンに笑って、ふと今日はもう少し焦らそうかと思う。 2005.1/1 年明け一発目からこんなんでなんかもう本当にすいません。 ■ (日記より抜粋。前フリです) 少し思うのです。 我らが雷撃将・火炎将はUの時点で27と26歳。 国家公務員で解放戦争の立役者の一人、 年齢も程よくしかも顔もいいときたら上司(何も知らなそうなクワンダあたり)に 見合いの一つや二つ、十個や二十個勧められてもおかしくないと思うのです。 でまあ当然二人は断るわけですよ、なんてったって最高の相棒がいますから☆ クワンダ(以下ク)「アレンもグレンシールもどうだ?そろそろ身を固めては」 赤「い、いえクワンダ将軍、そんなお気を使って頂かなくても…」 ク「しかしだな、二人もそろそろいい頃だろう。グレンシールは好みのタイプはどんなのだ?」 緑「好みと言われましても…。…でもまあそうですね、気は強い方がいいです」 赤「ぐ、グレンシール?」 ク「お、乗り気か?」 緑「(にっこり笑って)いえ全然。ですが一応好みというか、そういうのは申し上げておこうかと思いまして」 ク「ふーむ、そうか。で、他は?」 緑「気が強いくせに押しに弱かったりするといいですね」 ク「あー、そういうのは少し分かるぞ。年下と年上だったらどっちがいい?」 緑「年上で」(即答) ク「ほう、グレンシールは年上が好みか」 緑「ええ、そのくせ子供のような一面を持ってるとなお」 ク「そのギャップがいいのだな」 緑「いえ、ギャップというか………まあ、そういうことにしておきます」 ク「他にはないのか?」 緑「…少し天然、というか、思いもよらない発言を時々かますことですかね」 ク「ふむ…そうか、グレンシールの好みはよく分かった。(振り返って)じゃあアレンはどう……アレン?どうした、顔が赤いぞ」 赤「い、いえ…何でもありません……」 緑「(くつりと笑う)」 ク「………?」 みたいな会話をしてくれてるとね!!萌えるっていうか!!! ミルイヒあたりはグレアレを知ってると思うので、クワンダからそんな話をきいて 「あなたも野暮なことをするもんじゃありませんよ」とか言うんですよ!!(日記より抜粋) 2005.1/5 女の子の好みはまた別ですが、あえて言うグレンシールが書きたかったんです確か。 |