足元に、数匹の鳩が集まってきていた。
「…可愛いな」
頭を前後に揺らしながら歩く様は何故だか愛嬌があり、浮かんできた笑みはそのままにぽつりと、誰に言うでもなく呟く。
毎日餌をやっている人がいるのか人間を怖がる様子は一つも見せず、それどころか自分から近づいてきてはこちらの顔を見上げてくる鳩までいて、ますます浮かんでくる笑みを止めることが出来ない。
「ほんとに可愛いなあ、お前達。誰かに餌もらってるんだろうな」
答えが返ってこないことは知りつつも話し掛けると、いつの間にか増えていた鳩のうちの数匹がこちらを見上げた。無言で、だが首を傾げてこちらを見上げてくる様子はやはり可愛くて、思わず小さな笑い声をたててしまう。
と、次の瞬間いきなりその鳩達が一斉に飛び立ち、バタバタという音と共に視界が一瞬で白く染まった。そして。
「悪い。遅れた」
待ち人の、声。
ゆっくりと顔をあげて、鳩を追いやった張本人を見上げる。
「日にち間違えたかと思って、少しドキドキした」
「嘘つけ、鳩と戯れてたろうが。あまりに鳩がいすぎて一瞬分からなかったぞ」
「何だ、見てたのか」
「あれだけ鳩が群れてたら誰だって見るだろ。そしたらその中心にお前がいた」
「あー、時間よりも少し早く着いてさ。ふと周りを見回したら鳩がいたから、近づいて観察してたんだ」
そしたらいつの間にか囲まれてたみたいで。
あはは、と笑うと相手はため息とも言えないほどの軽い息をついて、それよりも、と口を開く。
「さっさと行くぞ。もう店開いてるし」
「お前、自分で遅れといて…まあいいけどさ。あ、あそこで昼買ってった方がいいんじゃないか?」
「だな。行くか」
「おう」

2005.3/3
以前にとった資格試験終了から数日後、友人とカラオケに行ったんですがそれを膨らまして小話にしたもの。





「あー、腹へった。俺も食べよ」
ジャーン、と最後に一際大きい音で曲が締まる。
それに満足したかのように笑うと、アレンはそれまで握っていたマイクをテーブルの上に置いてガサゴソと鞄の中から持ち込んだ昼食―――全国チェーンで大きなM字が特徴の、あのファーストフード店のセットを取り出した。
店員の姿が見えないことは当然確認済みで、しかし最低限の用心はしておくに限る。
ので、部屋の入口のドアから見ても死角になる、とは言い過ぎだが、パッと見店員の視界に入らない部屋の角へとソファ伝いに移動し、そこでようやく袋から昼食そのものを取り出すと何故だかホ、と息が抜けた。
緊張しているとかでは決してなく、食べ物を見ると安心するというただの人間的な心理なのだろう、それに空腹が加わってなんだかとてつもなく目の前の昼食がおいしそうに見えてきたアレンはそのまま、薄い紙に包まれていたハンバーガーにかぶりついた。
そして一緒に買ったポテトを口の中に放り込み、次は何を歌おうかなどと考える。
大体このカラオケボックスに入って二時間弱、一曲ずつ交互に歌っているからグレンシールと自分が歌ってきた曲数は同じはずだ。
むしろそうでないとおかしい。
(いや別にそうでなくてもいいんだけどさ)
それでも今グレンシールが歌っている曲が終わったら次は自分の番であり、そして自分はまだ曲を入れていないのだから、ここは手早く決めなければならないのだ。
まだ歌ってないのは何だったかと、いつの間にか最後の一口になっていたハンバーガーを飲み込んでパラパラと分厚い曲のリストをめくる。
「アレン」
「ん?何だよ」
向かいのソファからかかった声に歌の途中じゃないかとリストから顔をあげると、マイクを握っているのとは反対側の手が伸びて軽く頬―――というよりは口元をぬぐわれた。
何だ?と視線で問い掛ければグレンシールは呆れる一歩手前といった表情でたった今しがたアレンに触れた手を見せる。
その親指の先には、ただただ赤いケチャップが。
「…ついてた、んだよな…?」
そうとしか考えられないのに口調が確かめるようなものになってしまうのは致し方ない、とアレンは思う。
幼稚園児や小学生でもないのにそんなことをしてしまったとは誰だって考えたくは無いだろう。
だが事実は事実であり、よってグレンシールの反応も。
「ガキ」
と大層冷たいのは当然のことで。
「うー…いつの間についたんだ…」
「俺から言わせればいつの間につけたんだって感じなんだが」
何で普通に食べててつくんだ、と言われれば黙るしかない。
アレンより先に食べてしまったグレンシールの口元に赤いそれがついているわけは当然なく、じゃあ何で俺だけとまで考え、そしてハッと一つの可能性を思いついた。
「もしかして俺のハンバーガーの方がケチャップの量が多かったとか」
「機械でつくられてるんだからそれはないに決まってるだろ馬鹿」
しかしそれすらも見越していたかのようにグレンシールは淡々と、だが即座にアレンの思いついた考えを全否定した。
その上「馬鹿」の前に句読点がなかったのは彼が心底そう思っている証拠で、それが分かるくらいに付き合いが長く深いアレンはムッと眉根をよせる。
「…お前ムカつく」
「そりゃどうも。ほら」
「…何だ?」
ケチャップのついたその親指を顔の前に出され、アレンは大きな目を僅かに見開いた。
既にグレンシールが入れていた曲は終わってしまっており、廊下から聞こえてくる今週の最新曲が二人の耳に届く。
ああこの曲いいなあなんて思いながら目の前に出されたその指を見つめていると、グレンシールは再び呆れた表情になって。
「お前のだろ、舐めろ」
「あ、そうか…って違うだろ!ティッシュで拭けばすむ話だろが!」
あまりに至極当然といった口調だったため、ついそのまま受け入れそうになってしまった。
幸いテーブルの上には客用に用意されている簡易おしぼりがあるのだし、それを取ればいいだけの話なのに、このグレンシールという男はいけしゃあしゃあとほざいてくれるのだ。
「取るのが面倒くさい。大体お前が舐めても別に問題ないだろ。っつーわけで舐めろ」
「………まあそうだけど」
確かに自分達の関係からしたら問題ではないが、如何せん場所が問題なのだ。
まあ滅多に店員が来るわけではないし平日で人も少ないから、危惧するようなことは起きないだろうとも思うのだけれども。
…でもまぁいいかと、少し思う。
どうせ人に見られることもないだろうし、たかが指を舐めるだけなのだし。
軽いため息をついてからそっと、差し出された指に口づけた。

2005.3/4
上の続き。
拍手でネタを頂きました、ありがとうございます!





コツコツと、小さいが一定のリズムでその音が聞こえる。
どこからか生じる霧と無数に灯されたろうそくの明かりが奇妙な雰囲気を作り出し、いっそ幻想的とまで言えるほどの美しい情景を作り出していた。ここは確かに地下のはずなのに、先ほどまでは少なからず恐怖を抱いていたのに、何故か今はホ、と安心できるような、そんな空気が流れている。
それは向こうから聞こえてくる綺麗な音のオルゴールの力もあるのかもしれない。
気付いたら自分は豪奢なベッドで眠っていて、当然のごとくこんな場所に見覚えの無いアレンは当惑したように眉を顰め、そしてゆっくりとベッドから降りた。
素足にコンクリートの冷たさが移る。
だがそれを完全な冷たさとしてアレンが認識する前に、先ほどから聞こえていたコツコツという音が近くなっていた。
自分が何故こんなところにいるのかも気になるが、とりあえず動かないことには事態は好転しない。一体何の音だろうと、ベッドを覆う黒いヴェールを手で開く。
と。
「…目が、覚めたのか」
男の、声だった。
驚いて、思わず動きが止まる。
それからゆっくりと声がした方に顔を向けると、一人の男と目が合った。
右半分の顔、その頬から上を隠すような仮面が目にやきつく。
「……え、と…?」
いつの間にかオルゴールは途切れていて、音といえば時々滴る水しかない。そんな中で我知らずアレンが呟いた言葉は異様に響き、だがその緊張感のない自分の声に逆に少し安堵する。
とりあえず声は出せるのだと、そう思って。
そして必然的にこちらを見やっている男に再度意識を向けてからふと、コツコツという音がしないのに気付く。男の足元を見れば高級そうな靴があり、もしかして近づいてきていたあの音はこの靴音だったのだろうかと予想できた。
それから男の顔を見上げ、アレンは口を開く。
「…で、誰です…か?」
少し間が開いてしまったのは仕方ないと思う。気が付いたらこんなわけの分からない場所に寝かされていて、しかも先ほどの発言から察するにアレンをここに連れてきたのはこの目の前の男らしい。警戒心を抱くのは当然で、それでも声音に優しさを感じたのもまた事実、で。
職業柄耳が肥えている自分に少し呆れる。こんなところに連れてこられて優しいも何もないだろうに。
「…お前の、声に惹かれて」
だけど、呟かれた声はやはり優しいもので。
「…え?あ、ありがと…う…?」
ついそちらに気を取られ、その言葉の内容を聞き逃しそうになった。一瞬おくれてからそれを理解するとほぼ反射的に礼の言葉が喉をついて、しかし今の状況を思い出して語尾が僅かに上がる。
声に惹かれて、というのはいい。素直に嬉しい。が、自分は自分の意思でここに来たわけじゃなく、しかも眠らされていた。
ということは。
「つまりこれって誘拐…か?」
男を伺うように言ってみてから、目覚めたばかりの時に感じた恐怖が戻ってくる。
だがそんなアレンが意外だったように男は軽く目を瞬いた。
「いや、ちゃんと帰すつもりだが?」
むしろ何故そんな思考に辿り着くのかというようなニュアンスが含まれていて、アレンは僅かに身体の力をぬいた。完全に安心できるわけじゃないが、少なくとも最悪のケース―――殺されるとかには至らないらしい。
明らかにホッとしたアレンのその表情から、彼が考えいたことを正確に読みとって男は微かに笑う。
「もし殺したりなんてしたら、お前の声が聴けなくなるだろう?」
「え、あ、そーか…いやそういう問題でも」
ない、と言いかけたアレンを遮るように、男は再び歩き出した。少し離れたところにピアノが見え、男は迷わずにそれに近づく。
男の側に行ってもいいものかどうかアレンが迷っているうちに男はピアノの椅子に腰掛け、そしてポロンとゆっくりと弾き出した。
それはアレンが目覚めた時に聞こえた、オルゴールの旋律で。
惹かれるようにゆっくりと側まで行き、その音色に耳を傾ける。
「…お前、音楽好きなのか?」
自分の声に惹かれてというくらいだ、嫌いでないことは確かだろう。問えば男はピアノを弾く指の速さを僅かに落とし、「まあ嫌いじゃないな」と答えた。
「…素直じゃないな、お前」
思わず今の状況も忘れて本音がこぼれた。ついでピアノがふっと止んで、「しまった」とアレンが口を抑えてももう遅く、男はアレンを首だけで振り返った。
さっきは殺さないと言っていたが、ここは男の領域だ。アレンを助けてくれる存在なんていないに決まっている。綺麗な音につい気分が弛んでしまった自分を内心で罵り、機嫌を損ねただろうか、もしかしてやっぱり殺されるんじゃないかとまで考えて、ようやく男の驚いたような表情に気付く。
怒ったんじゃないのかとまじまじと見るアレンの視線に我に返ったのか、男は一瞬の間を置いて苦笑する。
「…お前の言う通りかもしれないな。確かに、そういうとこもある」
更に言われるまで気付かなかった、と言う男はなんだか楽しそうで、思わずその顔を見つめた。そしてその目が緑だということに今気付く。薄暗い地下ではよく分からなかったが、髪は薄い金色で割に―――というか、整った顔立ち、だ。
じゃあ何で仮面なんかつけてるんだと不思議に思いはしたが、そこまで突っ込んで訊く勇気はさすがにアレンにはない。
それでも手を休めて笑う彼は本当に楽しそうで、せめてこれくらいはいいだろと口を開いた。
「お前の名前は?」
「…名前?」
そう訊くとぴたりと彼は笑いをおさめて、それから先ほどのアレンのようにまじまじとこちらを見つめてくる。今度こそいらんことを言ったのかもしれないと思いつつ、それでも怒ったようには見えないので話を続けることにする。
「俺のことは知ってるんだろ?歌聴いてくれてるみたいだし」
「アレン、だろ?」
「そう。だからお前の名前は?」
あ、別に警察に言ったりするつもりじゃないぞ、と言い添えると彼はまた微かに笑う。
「別にそれを危惧したんじゃない。―――名前を訊かれたのが初めてだったから、驚いたんだ」
「初めて?」
そんなわけはないだろうと言いかけて、止めた。
今度こそ墓穴を掘るかもしれないし、とりあえず自分が知りたいのはそんなことではなくて。
「いいから、名前。初めて訊かれたっつーんだったら、初めてにふさわしく堂々と答えろよ」
「何だそれ」
おかしくないか、と笑みを重ねる彼におかしくない、だから教えろと詰め寄る。さっきまであった恐怖はどこかに消えて、自分でも不思議で。内心こんなに態度がでかくていいのだろうかと少し頭をかすめるけれども、まあいいかと持ち前の楽観主義で消し去った。
「ほら、お前の名前は?」
「…グレンシール、だ」
「グレンシール?」
苦笑しつつも名乗った彼は―――グレンシールは、どこか照れくさそうで。
名前を訊かれるのが初めてというのは、もしかしたら本当なのかもしれない。
それでも、そんな考えをおくびにも出さずにアレンは笑った。
「グレンシール、か。分かった。じゃあそう呼ぶな、グレンシール……って、あ、れ?」
そして突然、カクリと足の力が抜ける。意識が朦朧として、眠気が猛然と襲ってきた。
「…な、んだ…?」
そういえば素足のままだったと、床に手をついてコンクリートの感触に思い出す。いつの間にか気にもならなくなっていた。男との―――グレンシールとの会話に、気が取られていて。
「……ね、む…」
むきだしのコンクリートの上に倒れる。ゆっくりと、瞼が落ちて。
そこでアレンの意識は途切れた。
そしてグレンシールと名乗った男は、苦笑したまま足元のアレンを見下ろす。
「…変な奴だな、お前」
普通なら、怖がって泣き叫ぶか殴りかかってくるかするだろうに。
笑って、そして名前まで訊いてくるとは思いもしなかった。
「変な奴」
その変な行動はとても気持ちよいものだったけれども、そろそろ帰した方がいいだろう。夜明けはもう間近だ。
「…おもしろい奴だな」
最後に一言、そう声をかけて。
華奢なその身体を軽く、抱き上げた。

2005.3/17
オペラ座〜の映画を観に行ったので。
映画中にこんなシーンはもちろんないんですが、「これを読んで映画を観に行った」という方が
結構いて下さってとても嬉しかったです。





パラリ。
「『俺がお前を本物のエースにしてやる』」
パラリ。
「『俺、お前のこと好きだよ。だってお前頑張ってんだもん!』」
パラリ。
「『三橋は?』」
「アレン」
名前を呼んでやれば、おそらく手元の本のであろうセリフの朗読がぴたりと止まる。
「んー?」
それから間延びした声が聞こえて、グレンシールは相手に聞こえない程度の浅いため息をついて背後を振り返った。
アレンはこちらを向いておらず、だがその代わりというように、グレンシールの視線の高さについ今の今までアレンが読んでいたはずの本を掲げている。
「…それが何だ?」
「これに出てくる主人公が羨ましいなーと思って」
「はぁ?」
普通に話はしていても決してこちらを見ようとはしないアレンの発した言葉に、グレンシールは訝し気に眉を顰めた。
そして浅いため息をついて、自らの手元の本を閉じる。
これから言われるであろうおそらくは無理難題なその考えに無理やり付き合わされるのは目に見えており、更に言えばそれに逆らうのも無理だということは今までの付き合いで分かりきっていて。
「…で、お前は何がしたいんだ」
「ん、だからさ、俺もこうやってストレートに言われたいなあって」
ついでに俺がさっき読んでたセリフは主人公の相手役な。
そう言ってアレンはやっとこちらを振り返り、嬉しそうに笑ってそんなことを付け足した。
「ってことは主人公は女か?」
先ほどアレンが読んだセリフの中には『俺』という一人称があった。
ならば当然その相手である主人公は女だろうと、グレンシールは特に何も考えずに言ったのだが。
「いや、男だぞ?」
そんな答えが返ってきて、正直驚いた。
両方とも男ということはつまり。
「……随分堂々とした奴だな、その相手役は」
男が男に堂々告白か。そりゃすごい。
というよりも違う、話にするべきことはそうではなく。

2005.4/9
何故かアベミハをお題でグレアレ。
途中で終わってますが、無理がありすぎるということにもうちょっと早く気付け。
ちなみにセリフは記憶を頼りに打ったので間違ってると思いますが内容は間違ってないと思う!






その視線を受けて、幹部の一人である熊のように大きな身体の男が口を開いた。
「よお、帰ったな。どうだった?」
あの兄ちゃんは。
まるで旧友の今の様子を訊くかのような口ぶりに、だがグレンシールはうんざりした表情で返した。
「時間の無駄だった」
「助けてくれ、と言ったらしいですよ」
苦笑ぎみで付け加えたクレイの言葉に、熊のような男―――ビクトールは大笑いした。
「情けねえなあ。あんたが直々に出向いた甲斐もあったもんじゃねえ。…っておいおい、どこ行くんだよ」
大笑いするビクトールの横を自然な動きでグレンシールはすりぬけていってしまい、慌ててビクトールは呼び止めるが、本人は振り返ることなくただ一言。
「眠い」
と言ってそのまま階段をのぼっていってしまった。その後をクレイが当然のように追っていき、残されたビクトールは他の幹部と顔を見合わせる。
「…そういやあ低血圧だったな、あいつ」
「それより、いい加減その話し方やめなさいよ」
ため息とともに呟いたのは、ビクトールのすぐ横にいた女性だ。名前をアップルといい、ほとんど男で構成されているこの世界で、そういった周囲に呑まれることなく自分の才を発揮する彼女はグレンシールを始め他の幹部達にも高く評価されている。
「下にも示しがつかないし、第一無礼よ」
「いいんだよ、俺には敬語はにあわねえ」

2005.6/6
夜明けボツ文。
時間的には序章でクレイズ殺した数時間後、幹部が玄関まで出迎えに出てきたとこですね。




■管理人のWの戦闘時の基本スタイル
魔物が出た!
主「シグルドさんハーヴェイさんは協力攻撃を!キカさんは単独攻撃で!」
シ「分かりました」
ハ「おう!」
キ「分かった」
魔物の攻撃、ハーヴェイに50のダメージ!
ハ「うおっ!」
主「シグルドさん、ハーヴェイさんにおくすりを!ハーヴェイさんとキカさんはそのまま攻撃で!」
シ「はい!ほら、ハーヴェイ」
ハ「サンキューシグルド!おらっ!」
キ「はっ!」

魔物を倒した。
そしてまた戦闘。
主「シグルドさんハーヴェイさん、協力攻撃を!キカさんは単独で!」
シ「はい!」
ハ「おう!」
キ「分かった」

魔物を倒した。
そしてまた戦闘。
主「シグルドさんハーヴェイさんは協力攻撃で!キカさんは単独で!」
シ「はい!」
ハ「おう!」
キ「…分かった」
魔物紋章発動・全員にそれぞれ40前後のダメージ!
主「シグルドさんはハーヴェイさんに、ハーヴェイさんはシグルドさんにおくすりを!キカさんはそのまま突撃で!!」(W主は自分におくすり)
シ「分かりました、ハーヴェイ!」
ハ「ほらよシグルド!」
キ「…私にはおくすりないのか」

魔物を倒した。
そしてまた戦闘。
主「シグハーさんは協力攻撃で!キカさんは以下略!!」
シ「分かりまし…って、W主様!?今なんか変な略しかた…!?」
主「気にしないで下さい!さあ協力攻撃を!!」
ハ「ほらごちゃごちゃ言ってないでいくぞシグルド!!」
シ「あ、ああ…?」
キ「………」
魔物の攻撃、シグルド60のダメージ!
主「ハーヴェイさん、シグルドさんに特効薬を!シグルドさん、キカさんは単独攻撃で!」
シ「特効薬!?いえW主様、おくすりで十分で…」
主「駄目です、顔に傷でも残ったらどうするんですか!?」
シ「え、いえ、既にありますし、別に男なので」
ハ「ほらよシグルド、特効薬だ!」
シ「お前も人の話をきいてくれハーヴェイ…!」
キ「……私の方がさっきの紋章の傷もあってダメージくらってるんだが…」
主「どうぞキカさんおくすりです!」
キ「………いや、だから」

魔物を倒した。
シ「あのW主様、やはりシグハーというのは…」
主「あ、すいません。でも戦闘中にシグルドさんハーヴェイさんって慌てて言うと舌かんじゃう気がするんです。シグハーさんって結構いい案だと思うんですけど…駄目、ですか?」
シ「いやあの、駄目というか何か問題がある気がするんですが…」
ハ「おう、どうしたよ?」
主「ハーヴェイさん、協力攻撃の時シグハーさんって言ったら駄目ですか?」
ハ「ああ、舌かんじまうんだろ?別にいいけど」
シ「な!?」
主「本当ですか!?ありがとうございます!!あ、キカさーん!」
シ「え、ちょ…W主様!」
ハ「なんだよ、別にいいだろ。名前くっつけて呼ばれるくらい」
シ「………」

そして少し離れたところでキカとW主。
キ「W主…お前、私の部下に何を期待しているんだ?」
主「え、期待だなんてそんな。当然の指示をしているだけですが」
キ「どっちかが怪我したら必ず一方に回復させることがか?」
主「ええ、お二人は協力攻撃もありますし、そっちの方が親密度が更にあがるかと思って」
キ「……じゃあ訊くが、私とお前も協力攻撃があるはずだが?覚えた初めの一回以来全然していないな」
主「キカさんだったら、僕が間違った指示をしてもフォローしてくれるでしょう?それだけの腕前と経験をお持ちのはずです。だからつい、単独で動いて頂くように指示しちゃうんです」
キ「…………なるほど、オベルの王より余程人を束ねる力があるらしいな。よく回る口だ」
主「(にっこり笑って)そんな、全然ですよ。あ、魔物だ!シグハーさーん!!」

2005.7/6
みたいな会話をテッドに会うまで戦闘の度に頭の中で繰り返しながらクリアしましたWは。
シグルドとハーヴェイはもうどっちがどっちだか分からなくなってしまうほど呼んだので、
シグハーと略すことに(なにか作為を感じさせる呼び方)
一回しかプレイしてないので皆性格が微妙です。




■ご注意・W話でスノウ視点です。
「…………好きにしろ……」
見知った顔に囲まれ、それでも僕のなかには何も浮かんでこなかった。
自分がしてきたことは自覚しているつもりで、あのまま漂流していてもいずれは死ぬだけ。
ここで首を落とされるのとなんら変わらない現状にあがく気はないし、絶望もしていない。
それでも顔をあげることができないのは、多くの人の中心に立ってこちらを見つめているその存在。
幼い頃から一緒に育ってきた、かつての親友。
……親友、と僕だけが思い込み、そして僕が裏切った存在。
 その真っ直ぐな瞳が、痛かった。
今更何をと自分でも思うけれども、ラズリルにいた頃の仲間、その幾つもの視線よりも、ただ一人のその視線が。
「……ど、どうするの?」
緊張した空気が続く中、問われたそれに彼以外の人間が僅かに動いた。
クールークに対する軍を率いる者として、彼の下す判断を覆すことが出来る者はこの船上にはいない。
騎士団からの仲間のジュエルやポーラ、ケネスやタルでもそれは不可能で、逆に分かっているからこそ、彼らは戸惑いと緊張の中に身を置いている。
かつての仲間であったはずの僕と彼との間の溝を、充分とまではいかなくとも分かっているから。
もし僕が彼の立場ならば、絶対に許しはしない。
失った船員、仲間、何よりも僕自身のプライドのために。
 なのに、彼は。
「…………仲間に、なってくれ」
少しの沈黙の後、出された答えに瞬間、目を瞠った。
それが予想していたものと正反対の言葉なのだと頭が理解して、一瞬遅れて伏せていた顔を咄嗟にあげる。
先ほどまで絶対に見れなかったその碧の瞳は、変わらずこちらを見つめていて。
ざわりと騒ぐ周りの音に揺らぐことなく、真っ直ぐに。
「……いいのか?」

2005.5/19
このイベントの最後のセリフ「……ありがとう」の後に私的にちょっとやりたいことがありまして、
それを書こうとここまでやってみたんですがギブアップ。





グレンシールが二人いる、というだけならまだよかった。
全然よくはないが、それでも今の事態よりはよほどマシだったとアレンは思う。
「…で、一体どういうことなんだ…?」
「「さあ」」
多少高さが違うが、基本は全く同じである声が同時に答えた。
しかもやる気の無いトーンも同じで、アレンはがっくりと肩を落とす。
今現在のグレンシールがいることは問題ない、むしろいなくなられたら困る。
が、その隣にいる明らかに同一人物的な、それでも幼さが残る彼は誰なのか。
分からなかったら分からなかったで問題だろうが、これほどまでに断言できるのもどうかと思う。
この状態に(少なくとも見た目は)あまり動じた様子もなく、こちらを見つめてくるアイスグリーンは確かに見慣れている色で。
アレンの記憶からいって、これは間違いなくグレンシールなのだけれども。
「士官学校くらいの時か…?」
「だろうな。俺自身のことは分からないがそっちのアレンは間違いなく、あの時のお前だ」
今現在のグレンシールの目がアレンの隣に移る。
ついでアレンも隣を見ると、テーブルをはさんだ真向かい、ほとんど動じていない少年グレンシールとは違って普通のリアクションをしている少年―――多分、こちらも士官学校くらいのはずだ。
グレンシールが二人いるというだけならまだよかった。
何で自分まで二人いるのだろうかと、アレンは少し頭痛がするような気がした。
「な、何で目の前に俺がいるんだ?なんか大人グレンもいるし!」
「何だよ大人グレンって。アレン、お前ちょっと落ち着け」
「何でお前はそんな冷静なんだよ!?明日は剣技大会なのにこんなことしてる場合じゃないだろ!?」
「いやそれも違うだろ…」
一見まともな反応に見えたがやはりどこか違う昔の自分と少年グレンシールの会話に脱力しつつもアレンがツッこめば、現在のグレンシールが「やっぱお前だな」と呟いた。
「本当に俺か…?」
「あの頃、お前とどれだけ一緒にいたと思ってるんだ」
「…だよな」
士官学校時代、自分達は本当にいつも一緒にいた。
今思えば呆れるくらいその時間は多く、それでも話題がなくなることはなかった。
アレンだって覚えている。
あの時のグレンシールを、忘れるはずがない。
その自分が真向かいに座る少年をグレンシールだと思うのだから、よく似た少年などではないことは絶対だ。
だからこそ困っているのだけれども。

2005.8/17
今現在のグレアレと仕官学校時代のグレアレ。
これも好評で嬉しかったです。