「…ん…っあ……!」
天幕内に押し殺した声が広がる。
場所が場所だから両手で口を押さえているが、それでもやはり抑えきることは難しい。
やっぱり失敗だったか、とほぼ同時に二人は内心で呟いた。
「ぅんっ…、っぁ、んぁ!」
「っ、こら」
平常時よりは小さい、しかし先ほどまでのよりは一段と高く大きな声があがって濡れた音が止まる。
途端足りないという感情を目にのせてくるアレンに苦笑して、グレンシールは腰が動かないように気をはらいながらその目元を撫でた。
 アレンは不意打ちに弱い。
ここでもしグレンシールを受け入れているその内を抉ったりしたら、先ほどよりも大きな声がでるのは明白だ。
だが目元を撫でられるという、そんな何でもないことでもアレンの喉を震わせるには充分だったらしい、荒い息のまま本当に小さく、ぁ、と漏らすその様は確かに愛しいが、しかし。
「声、ちゃんと抑えろ。人払いはしたが…分からないからな」
「分かってるけ、ど…仕方ないだろ……っん、ふっ…!」
深く口付けて、緩く奥を突き上げる。
そのまま動きを早めれば背にすがり付いてくる手の力が増して、走る痛みにだが愛しさが募るのは、この状況でなら誰でもだろう。
ここが戦場の天幕内でさえなければ思い切り善くしてやるのに。
分かってはいるがやはり残念で、舌を絡めあっている今なら平気だろうと敢えて避けていたアレンの感じるところを集中的に突いてやる。
「んぅっ!?っ、ふぁ…っあ・ア…!!」
「っ、今はこれで我慢しろ…っ」
どうせ帰ったら、またいくらでもできる。
囁けば激しい動きのなか、何度も必死に頷くアレンに微笑んでまた舌を絡ませあう。
そろそろだと思うと同時に、しかし高揚した気分にまぎれることなく存在する戦場の非情さを、自分もアレンも決して忘れてはいない。






―――お互いが生きて帰ることができる保障など、あるわけがないことを。
























2008 5 28
タイトルと最後はシリアスにまとめてみましたが、当然この後ちゃんと二人とも生きて帰って思い切り善くされちゃうわけですよアレンは!!

ご精読ありがとうございました。