「んぅっ…!さ、すけっ……ぁ」
「だーめ。まだつきあってもらうよ、旦那」
「あ…ぅ、ん…っ」
深く突き入れたまま、中で腰をつかわれてゾクゾクとしたものが走る。耐え切れないというように頭を振れば、目元を指でぬぐわれた。
「普段は滅多に泣かないのに。そんなにいい?」
「ひぁ!あっああ…っ」
大きく中をかき回されて喘ぐことしか出来ない。布団をきつく握り締めると、労わるように手の甲をなでられた。
口では意地の悪いことを言っても、結局は優しいのだ―――この男は。
そんな佐助が好きで好きでどうしようもない自分は、例えば今、どんな表情をしているのだろう。
 愛しい相手に触れることは、例え戦場でも幸村の心を暖かくさせる。相手から触れられれば尚のこと嬉しいし、佐助のことを考えただけでいつの間にやら頬が緩んでいるらしい自分は、ではその佐助に触れられている時はどうなっているのか。元々気安い間柄だ、きっと締まりのない顔をしているのだろうことは想像に難くないどころか容易いぐらいだが、では今は。
 内に佐助を受け入れ、時に口づけては抱きしめ合い、絶えず佐助を感じることの出来るこの幸せで仕方ない時間。
ただ触れられるだけでも嬉しくて仕方ないのに、佐助を深く感じられる今はまさしく至上のものだ。
だからこそ、舞い上がりすぎて変な顔をさらしていないだろうかとふと、心配になった。幼い頃から仕えてくれている佐助相手では、それこそ今更かもしれないが。
「…、どうしたの…?」
身の内を穿っていた熱が、不意に止まる。突然訪れた休息に、しかし息は当然荒いままだ。ぼやけた視界で相手を見上げれば、微かに心配の色をのせた瞳と目があった。
「ち、……がう…、…」
「でも、何か考えてた。…つらい?」
男女でのそれでも、受け入れる側はやはり負担がかかる。加えて幸村は男だから尚のことだと、初めて抱き合う時に佐助に言われたのを覚えている。なのに自分は、その事実よりも常に飄々としている佐助が、穏やかな表情のなかに確かな真剣さを交えて気遣ってくれたことの方が大切で嬉しくて、そして今も、気遣うその声でさえも嬉しくて。
 つい、口元が弛んでしまうのをとめられない。
「旦那?」
「……こう、していると、き…俺は、どのような……を、しているのか、と」
気になったのだ。
息が整わない故に小声で途切れ途切れになってしまった上、最後はほぼ吐息のみとなってしまったが、優秀な忍である佐助ならば難なく拾うだろう。
「顔?」
思ったとおり言葉を拾いあぐねた気配は微塵も見せず、普通に聞き返してくる。やはり佐助は忍の中の忍だと、抱き合っている今この瞬間では場違いなことを思いながら幸村は頷いた。
そしてまた、ぽつりぽつりと話し出す。
佐助に触れられるとただでさえ嬉しいのに、こうしてお前を絶えず感じられる時はまさしく至上のもの。だから、情けない顔をしていなければいい、と。
 時間をかけてようやく最後まで言い募ったところで、強く抱きしめられた。
「佐助?どうし、っあ…!?あ・うあっ…!」
ぐ、と突如突き上げられて一瞬で熱がよみがえる。何度も深く深く打ちつけられ、頭がかすんでしまいそうなほどに。
「あ、あっ…さす、けぇっ……!」
「…っ、…艶っぽいよ」
「ひう!っく……、…え……、…?」
激しい動きのなか、ふと降ってきた声に目を開ける。こちらを見下ろす佐助は、何故だかとても嬉しそう、な。
「……ん…っ」
そのまま口づけられ、既に慣れてしまった、しかしそれから生じる熱や更に佐助を好きだという思いには慣れないままに深い口付けをかわす。その間も腰を動かされ、強すぎる快感にまた涙が浮かんできた。
「艶っぽい顔してる。…俺、に…っ、抱かれるのが嬉しいって……いう、顔で、…っこの上なく艶っぽい」
「……な、っあ・あああ!!や、あっ!」
「こうやって、感じるとこ…やれば、途端鳴いて…っくれるし、ね」
ガクガクと脚が震え、意識が保てなくなってくる。佐助に縋っている腕にもう力はなく、だが逃したくはなくて懸命に抱き寄せるとそれを分かっているのか、自分を抱く佐助の力が強くなったのが嬉しい。
 そして唐突に、佐助の顔が見たいと思った。
人を艶っぽいと言った佐助は、ではどうなのか。やはり同じように感じるのだろうか。
ただ意識も体も限界で、もう佐助に突き上げられるままにしか動けない自分は、もう瞼を開ける力さえも残っていない。勿体無いと心から思う。
 佐助のものならば、それがどんな表情であろうと見たいのに。
しかしどうにか頭の中で言葉を紡げたのはそこまでで、身体中の熱が一気に上がる。
 意識が天へと押し上げられるその一瞬、ただ佐助が好きだと思った。
























2008.6/11
一本目からこんなので本当にすいません。
佐助は幸村にだけ「だーめ」とか言うんだよと夢みてます。

ご精読ありがとうございました。